
開院してから19年目。
ありがたいことに、ずっと通ってくださっている患者さんも大勢います。
でも当院には、最初から回数券がありません。
「なぜ作らないんですか?」と聞かれることがたまにあるので、今日はその理由を正直に話します。
ケガは、思ったより早く治ることがある
捻挫も、打撲も、挫傷も——来院してみると、「もう少しで終わりそうですね」というケースは意外に多いです。
そういうとき、10回分の回数券がお財布の中にあったら、どうなるでしょう。
患者さんは「まだ券があるから…」と通い続けるかもしれない。
私は「早く終わりましょう」と言いにくくなるかもしれない。
誰も悪意はないのに、回数券がそこにあるだけで、不思議なバイアスが生まれてしまいます。
慢性症状も、「ずっと通わなければいけない」わけではない
慢性的な痛みや不調を抱えて来院される方も多いです。
でも慢性だからといって、永遠に週に何度も通う必要があるとは限りません。
セルフケアを覚えて、生活習慣が変わって、ある日「あれ、あんまり気にならなくなってきた」という方を、この19年で何千人も見てきました。
回数券があると、その「卒業のタイミング」が見えにくくなる気がするんです。
人生には、予想外のことが起きる
通院中に、別の病気が見つかることがあります。
ご家族の介護が急に始まることもあります。
自分が入院することになる方もいました。
私自身も長く入院が必要なこともありました。
そういうとき、「まだ券が残っているのに…」という気持ちが、患者さんの心の負担になってほしくないのです。
体のことより先に、返金やキャンセルの心配をしてほしくない。
来られなくなっても、ただ「また元気になったら来てください」と言える関係でいたい。
回数券って、携帯の「2年縛り」に似ていると思う
ところで、携帯電話やWi-Fiの2年縛り。 契約しているあいだは「元取らないと」「途中でやめたら損」という気持ちがどこかに生まれますよね。
回数券も、構造としてよく似ています。 残っている券が、通うかどうかの判断に、じわっと影響してくる。
身体よりも「券があるから」が先に来てしまう瞬間が、もしかしたらあるかもしれない——それは患者さんにとって、あまり気持ちのいい状態ではないと思います。
回数券がないということは、来るも来ないも、いつも自分の意思で決められるということ。 それが当たり前のようなことで、実は精神衛生上、とても大切なことだと思っています。
それでも、月に一度来てくださる方がいる
回数券がなくても、長年通ってくれている方は沢山います。
ケガが治ったあとも、「なんとなく調子を整えに」と月に一度来てくださる方。
季節の変わり目に「ちょっとメンテナンスで」とのぞいてくれる方。
それは義務でも、回数券の消化でもなく、ご自身の判断で「ここに来たい」と思ってくれているということ。
そういう関係が、私には一番うれしいです。
患者さんが、自分のペースで来られる院でありたい
「必要なときに来て、必要なくなったら卒業していい」
そう思える場所であることが、当院の一番の軸です。
回数券を作らないのは、その気持ちを形にしているだけ。
開院のときからそう決めていたし、19年経った今も、それは変わっていません。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
何かご不明な点はLINEまたはお電話でお気軽にどうぞ。